一般人たちのバトルロワイヤル
美樹さやかはごく平凡な少女だった。いや、現在もそうと言えばそうなのだが、とにかく彼女は最近になって非日常の領域に足を踏み入れた。社会の裏に潜み人々を死に追いやる魔女、それと戦う魔法少女。魔法少女になる際にどんな願い事もひとつだけ叶えてくれるアニメのマスコットのような契約の使者、キュゥべぇ。親友の鹿目まどかと共に魔女の結界に巻き込まれ、絶体絶命の窮地に陥ったところを魔法少女であり、自分達と同じ見滝原中学校に通う巴マミに助けられ、キュゥべぇに魔法少女としての資質を見出された。 それからしばらくの間マミの魔女退治に同行する形で魔法少女体験ツアーに参加していたのだが、その時間は唐突に終わりを告げた。巴マミの死という、最悪の形で。彼女の無残な死に様は一度はさやかを打ちのめしたが、ある出来事から魔法少女になる確固たる理由と願いを見出し、今まさにその願いをキュゥべぇに告げようとした時、急に意識が遠のき気付けば殺し合いを強要されていた。「何がどうなってるってのよ…」あまりに急激な状況の変化についていけず、その場に蹲って頭を抱える。今さやかがいる場所はどこかのビル街の裏路地らしきところだ。通りを見れば、雑踏を行き交う人々の姿が見える。「実はドッキリだったなんてオチは…あるわけない、か…」脳裏を過ぎるのはつい先ほど、主催者に逆らったミストという青年が殺された光景だった。つい先日マミが似たような死に方をしたためか、さやかは自然とそれを現実と認識出来ていた。「マミさんさえ生きてたら、あたしが魔法少女なら、あんな奴の好きにさせないのに…!」殺し合いを愚かな事と言い切ったあの青年は間違いなく善良な人間だったはずだ。決して死なせて良い人間ではなかった。自分があと少し早く決断し、魔法少女になっていればあるいは助けられたかもしれないのだ。だが現実は非情だ。この身は未だただの一般人。この殺し合いを打破するどころか自分の身を守ることすら覚束ない。そこでようやく既に殺し合いが始まっていることに気が付いた。「と、とにかく荷物を確認しなきゃ…」いつの間にか足元に置かれていたデイパックを拾い上げ、中身を確認し始めた。まず自分が今いる場所を把握しようと地図を取り出したのだが…「こんなんでわかるわけないじゃん…」
「えーっと、ごめん。学校で会った事あったっけ?いや、何かすっごいどこかで会った気はするんだけどいまいち名前が出てこないっていうか…」「あ…すいません。最近転校してきた暁美ほむら、です…」「………はい?」暁美ほむら?暁美ほむらと言ったかこの眼鏡っ娘は?あの才色兼備のスーパー転校生であり、キュゥべぇを傷つけた冷血魔法少女とこのいかにもな文学少女が同一人物だと?さやかがそんな思考を展開しながらその場にフリーズしてしまったとしても誰にも責められまい。目の前の少女はさやかの知る暁美ほむらと一致するところなぞ無きに等しいのだから。「…ごめん、もう一回言ってくれる?何か今すごい空耳が聞こえちゃったみたいなんだよね」「あ、暁美ほむらです…」「いやいやいやいやいやいや、有り得ないから。こんな状況だし偽名で誤魔化したくなるのはわかるけど、もうちょっとマシな嘘つこうよ。そんなんじゃこのさやかちゃんだって騙せないからね?」「ぎ、偽名じゃありませんし嘘もついてません!」「いや、そんな真顔で言われても…。ん~、じゃあ聞くけどキュゥべぇとか魔法少女って何か知ってる?」暁美ほむらの偽物なら絶対に知らないであろう質問をぶつけると、暁美ほむら(仮)の目が驚きに見開かれた。「ど、どうして美樹さんがそれを知ってるんですか!?もしかして美樹さんも鹿目さんや巴さんと同じ魔法少女なんですか!?」何故かいきなり目を輝かせながらさやかの眼前に迫ってくる。先ほどまでの消え入りそうな雰囲気から一転した態度に思わずたじろいでしまう。というかこの暁美ほむら(仮)は今聞き捨てならないことを口走らなかったか?「ちょっとあんた、今まどかが何て…」「あ~君達、ちょっといいかな?多分、二人とも参加者だよね?」「「!?」」突然声を掛けられ、後ろを向くと茶色のスーツを着た冴えない雰囲気の男性がデイパックを翳しながら立っていた。さやかとほむら(仮)の警戒を見て取ったのか男性はデイパックを置いて両手を挙げた。「怯えるのはわかるけど、僕はこんな殺し合いになんか乗ってないよ。嘘だと思うなら僕のデイパックの支給品を見てみてよ」言われてさやかが恐る恐る男性のデイパックの中から支給品と思しきものを取り出していく。入っていたのは現金(諭吉が二十枚ほど見えた!)に双眼鏡、そして何故かキャベツが丸ごと一玉だった。
「あー…確かにこれじゃ人殺しは無理っぽいね」「でしょ?お金と双眼鏡はまだわかるけどさ、キャベツだよ?こんなので一体全体どうやって殺し合えっていうんだろうね?あ、自己紹介しておくね。僕は足立透。稲葉署勤務の刑事です。って言っても手帳は没収されちゃってるから信じてほしい、としか言えないんだけどね」刑事という肩書きのわりに妙に砕けた、良く言えば親しみやすい話し方の足立に自然と二人も警戒の度合いを落とした。するとほむら(仮)がおずおずと前に出てきた。「あの…刑事さん、どうして私達が参加者だってわかったんですか?」「そりゃあ自分が持ってるのと同じデイパックを持ってる人間がいれば、誰でも同じ参加者だって気づくよ。で、少しの間この双眼鏡で様子を見させてもらってたってわけ。趣味が悪いのはわかってるけど、僕も命がかかってるんだしこれぐらいは許してよ。そんなことより君達、何か込み入った話をしてたみたいだけど、そういうことは場所を移してからの方が良いんじゃない?」「どこかアテでもあるんですか?」「もちろんさ。まあ僕を信用してくれるなら、って前提だけどね」足立の提案に二人はしばし迷ったものの、頼りないが悪い人間ではなさそう、ということで意見が一致し、簡単に名前だけ自己紹介をした後彼と行動を共にすることにした。足立が選んだ場所はさやか達でも知っている有名なカラオケチェーン店だった。足立は受付を済ませると割り振られた部屋に二人を案内した。「ここなら内緒話も安心して出来るし夜も明かせる。ホテルは高いし他の参加者も目をつける可能性が高いからね。何より年頃の女の子が野宿ってのはまずいでしょ」そう言って肩をすくめる足立に促されるままさやかとほむら(仮)はソファーに座った。緊張が解けたせいかどっと疲れが押し寄せてきた。「疲れてるところ悪いんだけど、ここらでお互いの支給品を確認しておかない?って言っても僕はもう見せたから君らの分を見せてもらうことになるけど」「それもそうですね。じゃああたしから、凄い支給品よ来い!」勢いよくデイパックから手を引き抜いたさやかの手に握られていたのは、燦然と輝く黄金の剣だった。一瞬だが場の空気が凍った。「って本当にきたああああああっ!?っていうか重い、重いよ!!」西洋剣というものは一般的に重さで叩き切るものである。それはさやかに支給されたこの剣、エクスカリバーも例外ではなかった。よってただの女子中学生に過ぎないさやかが剣の重量に耐え切れず、床に落としてしまい、そのまま床に突き刺さってしまったのも自然な流れだった。「あ、ああ…床が…」「…あー、ここはバーチャル空間らしいしね。大丈夫大丈夫、僕らは悪くない。多分、きっと」「そこは言い切ってくださいよ!?っていうか何でこんな重い剣があたしのデイパックに入ってたの!?」明らかに物理法則を無視した現象に足立もほむら(仮)も目を丸くする。結局エクスカリバーは足立とさやかが二人がかりで持ち上げてデイパックに仕舞い込んだ。「じゃあ気を取り直して…これだ!」決めポーズを取りながら出したのは腕に巻くタイプのアクセサリーのようなものだった。「あ、こっちは説明書がありますね。えーっと、『チャクラリング』っていうみたいです。『ペルソナのスキルを使用した時の精神力の消耗を抑えます』?」「…何それ?自称霊能力者のインチキ商品か何かなのかな?」「そこ!インチキとか言わない!あたしの支給品なんだから!」不穏な事を口にする足立とほむら(仮)を睨みつけながら最後の支給品を取り出した。出てきたのは、恐らくこの場の全員にとって最も有用な代物だった。「じ、銃だ…!これ、本物だよね?何かやけに重いし、薬莢とかついてるし!これ、実弾なのかな?」べたべたと銃身を弄るさやかの手から、いきなり銃が離れた。いつの間にか回り込んだ足立に取り上げられたのである。「ちょっと何するんですか!」「あのね、僕が刑事だってこと忘れてない?扱えっこない剣ならともかく、銃を民間人の、それも子供に持たせるわけにいかないでしょうが。これは僕が預かります。ほら、薬莢も出して」渋々といった様子で薬莢と付属の説明書を足立に渡す。どの道さやかが使うより足立が使う方がまだマシだというのはわかっているからだ。すると今度はほむら(仮)が若干張り切りながら自分のデイパックに手を突っ込んだ。柔らかい感触に違和感を覚えながらも勇気を振り絞って中身を引っ張り出す。そして誰もがその場に凍りついた。「………」「………」「………」「やあ」
出てきたというべきか、あるいは現れたと形容するべきか、ほむら(仮)の手には耳や頭や尻尾に女性用の下着を引っ掛ける格好になったキュゥべぇが握られていた。流れる沈黙。一瞬とも、永遠とも思える時間が流れた。「い、いやああああああああっ!!!」顔を真っ赤にしながらキュゥべぇを壁に投げつけるほむら(仮)。とても最近まで入院していた少女の腕力から繰り出されているとは思えないほどの剛速球(?)だったという。「うわ、何かいっぱい下着出てきた…。っていうかこれ、どれもこれもまどかが体育の授業の日に着けてたのと同じやつな気がするのはあたしの気のせい?」その答えは神のみぞ知る。「まったく、いきなり僕を壁に叩きつけるなんてどうかしてるよほむら」「ご、ごめんなさい…」しばらく後、全員が落ち着いたのを見計らって足立が切り出した。「えーっと、美樹さんと暁美さんはこの、キュゥべぇ君だっけ?この子について何か知ってるの?」「足立さん、キュゥべぇが見えるんですか!?」「え?そりゃ見えるからこうして聞いてるんじゃない」当たり前のようにキュゥべぇを視認できる足立にさやかとほむら(仮)は困惑し、視線を当のキュゥべぇに向ける。そのキュゥべぇは思案しているのかしばらく間を空けた後、こう答えた。「それは多分この空間のせいだろうね。本来僕が見えるのは魔法少女の資質を持つ少女だけなんだけど、この空間では誰でも僕の姿が見えるようだね。というかほむら、僕にもわかるように現状を説明してくれないかい?気付けば君の荷物の中に入れられていたからね、状況が全くわからないんだ」「おーいキュゥべぇ、あたしとの感動の再会は?」「…?君は誰だい?魔法少女の資質はあるようだけど…ほむら、君の知り合いかい?」「あ、その…クラスメイトの美樹さんなんだけど、どうしてか話が噛み合わなくて…」「ちょっとキュゥべぇ!あたしのこと忘れちゃったの!?っていうかそうよ!思い出した!あんたさっきまどかが魔法少女だとか言ってたけど、あれってどういうことよ!?」「まあまあ落ち着いて。何か話が込み入ってるみたいだし、ここは一度お互いの情報を出し合ってみようよ」足立の仲裁でさやかも一旦引き下がり、改めてさやかとほむら(仮)が交互に自身の知っている情報を話すということで落ち着いた。ほむら(仮)の話した出来事は、そのほとんどがさやかの記憶と一致しなかった。半年の入院生活を終え、見滝原にやって来たものの勉強でもスポーツでも他の皆に遅れを取る自分。大きなコンプレックスを抱えていたある時、魔女の結界に取り込まれたところを魔法少女になったまどかとマミに助けられた事。それからさやかと同じくキュゥべぇに素質を見出されたこと、そしてこれまたさやかと同じくまどか、マミの魔女退治に同行する日々。まどかが契約した理由を聞いたところで、さやかが腕を組んで唸りながら感想を漏らした。「何それ…って言いたいとこだけど妙にリアリティある気がするのよね…。そこにあたしが含まれてないのが納得できないけどね」「なら君の話を聞かせてほしいな。その上でどこが何故食い違っているのか検証するのが一番効率の良い解決策じゃないかな?」「う~ん、それもそうか」確かにキュゥべぇの言う通りかもしれない。考えてみれば当たり前のことと思い込んでいただけに、自分の事情を話そうとはしていなかったように思う。それにこのままでは最悪自分の方が嘘つき扱いされかねない、という危機感もあった。「…大体こんなところかな?やっぱり一番わからないのが転校生の違いなんだよね。まどかやマミさんとかは、仮に作り話だとしたって十分有り得そうな気がするんだけどね」「うーん、見事に話の内容がずれてるね。あ、暁美さん大丈夫?顔色が良くないよ」さやかが話している間、ほむら(仮)は声を張り上げるのを堪えるように俯き、両手でスカートを掴んでいた。あまりにも違いすぎる自分自身(そもそも自分は魔法少女になってもいない)、そして何よりもマミの戦死。いけないとわかっていても、反論せずにはいられなかった。「いい加減なこと、言わないでください…!私がキュゥべぇや巴さんにそんな酷い態度をとるわけありません!それに、巴さんが…死んだなんて……!」涙ながらに抗議するほむら(仮)の姿に、さやかはある事に気がついた。先ほどの自分は彼女の言うことを頭ごなしに否定し、まともに取り合おうともしなかった。信じられないような内容、という意味ではどちらにとっても変わりないにも関わらずだ。足立やキュゥべぇの仲裁が無ければ最後まで聞こうともしなかったに違いない。(ダメだなあ、あたし)思い返せば自分はいつも思い込みが激しい気がする。とにかく、まずは彼女を、目の前の暁美ほむらを否定せずに受け止めよう。そうしなければきっと何も始まらない。
「ごめんね、酷いこと言って。でもあたしにとってはこれが真実。でも、あんたが言ってるのもきっと本当のことなんだと思う。だからさ、何でこんなに違っちゃってるのか一緒に考えよう」「美樹さん……」「二人とも、その事について僕なりの考えがあるんだけどいいかい?」キュゥべぇに言われてそちらに振り返る。それからキュゥべぇはやや間を空けてから説明を始めた。「君達が言うところの並行世界、それがこの事態を説明する上で一番大きい可能性だと思う。何かのきっかけで枝分かれした二つの世界からほむらとさやかは連れてこられたんじゃないかな。その場合でもほむらの人物像の乖離や、史上最強と言われるほどのまどかの素質についてはまだ不自然さが残るけど、現状ではこの考え方で問題ないと思うよ」「おお、さすがキュゥべぇ。あたしにはちっともわからないけどね!」「いや、そこは威張るとこじゃないでしょ…」「美樹さん…」呆れ顔のほむらと足立から目を逸らして口笛を吹くさやかだったが、ふと思いついたように口を開いた。「それで、これからあたし達どうします?あたしはこんな殺し合い、認めたくないし何とかしたいけど使える武器が銃だけじゃちょっと…」足立が返事に困って言い淀む中、ほむらがおずおずとデイパックから冊子らしきものを取り出した。「あの、これ参加してる人の詳細な名簿らしいんですけど、今は何も書かれてないんです。これを何とか活用できないでしょうか?」「…暁美さん、それ使えるよ。ただ、少し時間が要りそうだけどね」「どういう事ですか?」さやかの疑問に足立は悪戯を思いついた子供のような笑みで答えた。「二人とも、確か僕らに普通に支給されてる名簿も今は白紙だったよね?でもって、何故かラジオもセットになってる。この二つを見て僕はピンときたね。きっとあのやらない夫とかいう主催者は、あと何時間かしたら僕たち参加者に何かしらの連絡事項を伝える気でいるんだと思う。そしてそれを伝えるための手段がこのラジオなんだ。僕が思うにあの主催者は典型的な劇場型犯罪者だね。恐らく最初に放送をするタイミングで名簿の情報を公開する気なんだろう、演出の一環としてね。言い換えれば僕らは誰にも会わず、ここでじっとして放送の時間を待ってればそれだけで他の参加者よりも多くの情報が手に入る。ここを出るのはそれからでも遅くはないさ」
「おお、さすが現職刑事!っていうかもしかして足立さんって頭良い?」「もしかしてって…君は僕を何だと思ってるの?こう見えてもね、僕は最近まで本庁勤めだったんだからね!」「まさかのエリート!?」「ちょっと、君さっきから僕に対して風当たり強くない!?あんまりひどいこと言うと東京案内してあげないよ!?」子供のような漫才を繰り広げる足立とさやか。それを見るほむらの表情も自然と綻ぶ。「あ、やっと笑ったねほむほむ」「えっ?っていうかほむほむって何ですか!?」慌てるほむらを見てさやかもまた悪戯っぽい笑みを浮かべる。「いやー、そんだけ萌え要素満載してるんだから素敵なあだ名でも考えた方が良いかなーって。あ、もしかしたらあたしの世界の転校生にも意外な萌え要素があるのかも?よし、この戦いが終わったら思いっきりからかってやろう!」「はいはい、あからさまなフラグを建てないの。僕はちょっとトイレ行ってくるから荷物見ててね」そう言って軽い足取りでトイレへ向かった。足立が部屋を出たのを見計らったかのように、キュゥべぇが二人に話しかけた。「ほむら、さやか、わかってるだろうけど君たちには魔法少女としての素質がある。普段とは明らかに違う状況だから無理強いはしないけど、その気になったらいつでも僕と契約してくれて良い」「そんなこと言われても、やっぱり私に戦いなんて無理…」「あたしも、願いはあるけど今はそれどころじゃない、かな?あんまり詳しく言えないけどこの願いは譲れないからさ、絶対に叶うって時にしたいんだ。並行世界とか何とか絡んでくるなら、もうちょっと慎重に考えて決めたいから」「そうかい、僕はいつでも待っているよ」そう言ったきり、無言になったキュゥべぇ。本来なら近い未来に魔法少女になるはずだった二人。彼女達を待ち受けるのはいかなる運命か。
【1日目・深夜/I-7 中央区カラオケ店】【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】【状態】健康【道具】支給品一式、キュゥべぇ@魔法少女まどか☆マギカ、まどかの下着@魔法少女まどか☆マギカ、参加者詳細名簿@オリジナル【思考・状況】基本行動方針:殺し合いに乗らずに元の世界に帰りたい1:さやか、足立と共にカラオケ店に留まる2:戦いなんて無理…3:違う世界の私って…?[備考]※参戦時期は一週目の世界、まどかとマミに助けられてからマミ死亡までの間です※本編世界の状況を(さやか視点で)把握しました※キュゥべぇの参戦時期はほむらと同時期です【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】【状態】健康【道具】支給品一式、エクスカリバー@Fate/stay night、チャクラリング@ペルソナ4【思考・状況】基本行動方針:殺し合いに乗らずに元の世界に帰りたい1:ほむら、足立と共にカラオケ店に留まる2:キュゥべぇとの契約はしばらく保留3:まどかのことが気がかり[備考]※参戦時期は本編第四話、キュゥべぇと契約する直前です※一週目世界の状況を(ほむら、キュゥべぇ視点で)把握しました「やれやれ、ガキのお守りも楽じゃないよ。まあ一人でいるよりはマシかもだけどさ」トイレの個室の中、足立透は誰にでもなくそう呟く。その表情は先ほどまでの剽軽な若手刑事とはまるで違う、とことん無気力な人間のそれだった。未来への希望などというものは、こんな殺し合いに招かれるまでもなくつい最近絶たれたばかりだ。仕事上の些細なミス(足立視点)で本庁から片田舎の署に左遷された時点で自分の出世街道など閉ざされたも同然だ。なので足立には元の世界に帰りたいという渇望はそこまで無い。だからといってここであっさり殺されたいかというとそんな事もないのだが。(そりゃ都会に戻りたいとは思ったさ。刺激は欲しかったさ。でも…だからってこれはないでしょうよ)思い返すのはこの殺し合いに招かれる直前の出来事。稲葉署での相棒であり上司である堂島と共に外回りをしてから疲労困憊で帰宅し、テレビをつけると密かに応援していたテレビ局の女子アナウンサー、山野真由美の不倫報道にショックを受けてそのまま不貞寝していた。ところがその後不思議なことが起こった。時計の針がちょうど深夜零時を指したところで電源を切っていたはずのテレビが何故か突然映りだしたのだ。何事かと思いテレビに手を伸ばすと、何と自分の手がテレビの中に入り込んだのだ。慌てて引き抜こうとしたところで強烈な眩暈に襲われ意識を失い、気が付けばあのやらない夫とかいう、どこぞの巨大掲示板の創作キャラクターのようなふざけた名前の主催者に殺し合いを強要されていた。 もし過去に戻れるなら好奇心に負けた先ほどの自分をぶん殴ってやりたい。「にしても、魔法少女ねぇ…」先ほど知り合った二人の少女、美樹さやか(どちらが苗字で名前なのか紛らわしい)と暁美ほむら。そしてほむらのデイパックから出てきたキュゥべぇなる珍生物。二人と一匹の口にした魔法という存在は、まあ恐らく実在するのだろう。そう考えればこの異常事態の連続にもある程度は納得がいくというものだ。そして彼女らの話が真実(途中で平行世界がどうとかいう話題になったが別にどうでもいい)ならば、さやかとほむらは魔法少女とやらになる素質があるということだ。 この事実は足立の身の安全を確保する上で大いに活用できる。足立が考えたこの殺し合いを生き抜く方法、それは隠れることだ。まずは当面このカラオケ店に籠城し、他者との接触を避けて戦闘をやり過ごす。そしてもしこの状況を打破できる参加者が存在するなら詳細名簿の情報を手土産にそちらに合流し、殺し合いの打破が不可能ならば極力他人を殺さず生き延びて、(やりたくはないが)最後の一人だけを懐にしまった銃で殺して優勝を狙う。勿論最初から最後までそこまで上手くいくとは思っていない。さやかの言う魔法少女とやらが実在するなら尚更だ。だがそこであの二人が魔法少女の契約ができるという点が活きてくる。生命の危機ともなれば契約をしない、という選択肢は無くなるだろう。そして殺人者に襲われた土壇場で契約したとなれば、引率者である足立の評判が低下することは避けられる。自分より一世代は年下の少女に殺人者と戦わせることに良心の呵責を感じないわけではないが、やはり自分の命が一番である。(大体こんなところで法も正義もあったもんじゃない。弱い僕が強い奴に守ってもらって何が悪いってんだ)客観的に見てとても警察官とは思えない駄目人間丸出しの思考だが、足立なので仕方ない。別段夢や情熱を持って生きているわけでもないが、人を殺して平気でいられるほど図太くなく、さりとて潔く死ぬ決心もつかない以上、なるべく人を殺さず生き延びることに力を尽くすしかない。
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