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夜食の時間

「殺しあえ、か…」

高いビルの上。
普通の人間であれば足が竦むような高所の、しかも手すりも何もない屋上の端。
薄汚れた白い服を纏った男は、その風景に恐れることもなく冷静に周囲を見通していた。
その鍛え上げられた肉体から発せられる気は並大抵のものではないことを示すほどだ。
しかしその白い髪は何かしらの病気を患っていたことを伺わせる。

彼の名はトキ。世紀末の世界において名を馳せた、暗殺拳を繰る拳士である。
しかし、目の前に広がる光景は世紀末のそれではない。どうみても核戦争以前の、平和だった世界の頃の街並みだ。
ここは死後の世界なのか、あるいは自分は死ぬことなく何者かに連れ去られたのか。
考えても分からない。まずは他の参加者を見つけ出し、情報を集めることが先決だ。
無論、彼の中には殺し合いに乗るという選択肢など存在しない。相手が乗っている者であれば相応の対応をしなければならないが、そうでないものであればむしろ守っていかねばならない。
下には殺し合いの場とは思えない、多くの人が歩き、話し、過ごすというとても懐かしい空気の営みが見える。
明かり、喧騒、全てが懐かしいものだ。
バーチャル空間と言ったか。それが本当なら如何ほどの技術を、この主催者は持っているのだろうか。

「…!?」

だが、次の瞬間、その街の中に、異様なほど場違いでそれでいて禍々しい空気が混じっているのを感じ取った。
まるで平和な村に、あと数分もしないうちにモヒカンの軍勢が襲撃をかけようとしているかのようなざわつき。
次の瞬間、トキはその屋上をそのまま飛び降り、その気配の元を目指して駆け出した。



それと時を同じくした頃。
金髪の縦ロールを揺らしながら、少女は駆けていた。偶然にもその場所は白き聖者と同じ目的地。

巴マミ。見滝原の街を守る魔法少女。
人を守るために戦いを続ける彼女には、当然殺し合いなどというふざけたものを許せるはずもなかった。
ゆえに彼女には殺し合いに乗るなどといった選択肢は存在しない。


街の風景は見滝原のそれではない。所々にある看板や標識を見るに、どうやら東京を模したもののようだ。
バーチャル空間と言ったか。街行く人々も周りの建物も、実物にしか見えない。一体どんな技術なのか。
そんなことも頭をよぎったものの、ある事実に気付いたとき、そういった思考の全てが消し飛んだ。

現在地はそこそこ開けた空間。きっと昼であれば公園のような場所となる広場が見える。
そして目指す先、どうやら国際展示場らしき場所が視界に入る。

巴マミが走る理由。
身を魔法少女の衣装に包んだ彼女は、オレンジに輝く宝石をその手に掲げながら呟く。

「…この中ね。魔女の結界が張られているのは」



そこはまるで異常な空間。
さながら御伽噺のように積み上げられた大量のお菓子。
建物、扉、道、置物。全てがお菓子、お菓子、お菓子。

そして、そこに蠢く異形の生き物。いや、果たして生き物なのだろうか。
細く棒のような脚。何重にも円の重なった、おそらく顔に位置する部位の模様。体には赤い斑。
それが大量に集い、一人の人間を取り囲んでいた。

人間は動かない。年はまだ成人していないほどの少女。
さっきまではこの生き物達はこの空間を、お世辞にも速いとはいえない速度で走るこの少女を追っていた。
そして、やがて疲れ果て倒れこんだ少女を、この生き物、使い魔たちはこの開けた空間に連れてきたのだ。

使い魔たちは巨大な椅子と机の近くで蠢く黒い魔力を見守り続ける。
そこにまるで孵化するように生まれ出たのは、キャンディの様な頭部に円らな目の、一見すると人形と間違えてしまいそうな物体。
愛らしい姿だが、しかしまぎれもなく魔女と呼ばれる存在であるそれ。
それ、お菓子の魔女はふわふわと浮き上がり、倒れて動かない少女の近くに寄る。使い魔たちはそれに合わせて少女から距離を取った。

布のような手でツンツンと突くお菓子の魔女。しかし少女は身動き一つとらない。
次の瞬間、魔女の体が膨れ上がり、異形の姿に変化する。
体には使い魔と同じ斑模様。花型の鼻。頭には赤と青の羽。風船のように膨れ上がった顔面に、長い胴体。
これまたファンシーな姿をしているが、口を開けばそこには鋭い牙が生え揃っている。
第2形態へと姿を変えたお菓子の魔女は、改めてその動かない少女に、鼻らしき部位を近づけ、匂いをかぐような行動を取る。

そして、次の瞬間、その巨大な口を開き、その意識を依然として取り戻さない少女を、一口に飲み込んだ。
 



 く う く う お な か が な り ま し た




「…っ?!」

トキは、その空間、国際展示場の最も広い空間の扉の前にいた。
謎の空気をたどってたどり着いた場所がここだったのだ。
だが、扉に手をかけた瞬間。おそらく一瞬だろう。それまでとは違うまた異質な気を感じたのだ。
それは、歴戦の戦士として名を馳せたトキですらも身震いをしたほどのもの。

しかし、だからといって怖気づくような男ではない。
扉を少し開き、中の様子を伺う。
無人の空間。明かりは、月が内部を微かに照らすほどのものしかないがトキにはそれだけで十分だ。
そしてその中心地点。倒れている少女の姿を、トキは捉えた。

慎重に、ゆっくりと中に入る。人の気配はない。この男を前にして気配を隠せるものなど、そうはいないだろう。
少なくともトキに感じとることのできる異常は見当たらない。その事実を確認したトキは、一気に少女に駆け寄った。

「…息はある、か」

肉体には疲労の色が強く見られるが、外傷はない。せいぜい手に刺青のような痣が見えるくらいだ。だが、その背に触れたとき、少女の体の気が不自然に乱れているのを感じた。
そう、まるで重い病でも患ったかのような―――

バンッ

と、トキの入ってきたものとはまた別の扉が勢いよく開かれた。
見ると、マスケット銃を構えた少女が周囲を慎重に伺っている。
そして、こちらの姿を視認したとき、警戒するようにゆっくり、慎重に近寄ってきた。

「よせ。こちらは通りがかりにこの少女を保護しただけだ」
「―――何かここで異常なことが起こりませんでしたか?変な怪物に襲われたとか、気がついたら自分がここにいたとか」
「いや、確かにこの周辺で変な空気を感じ取ったのは事実だが、ここについてからは特に何か起こったということはないな」
「……そうですか。…もしかしてあなたも?」
「ああ、参加者だ」

少女、巴マミは何か腑に落ちないといった表情を浮かべつつ、マスケット銃を収める。


「その方は?」
「ここについたときに倒れていた。ずっと意識を失ったままだから詳しいことはまだ聞いていない」
「う…、うぅ…」
「気がついたか?」
「あ、れ?ここ…は…」
「国際展示場の中です」
「何があったか、思い出せるか?」
「その…、分かりません…。気がついたら、変な場所に出てて、そこから先の、記憶が…」

巴マミはそう呟く少女を見つめつつ、ソウルジェムをかざす。
先ほどまであったはずの魔女の反応が、綺麗に消え去っているのだ。
逃げた、と判断しようにも魔力の痕跡が一切ないというのが不自然だ。
それに、

(あの時に感じた、膨大な魔力は一体…)

トキが扉を開ける前に感じ取ったそれを、彼女も感じ取ってはいた。
魔女が誕生したのかと判断し急いだものの、魔力が消え去ったのはそこからだ。
目の前の少女からは魔力を感じない。つまり魔法少女などではない一般人ということだ。

「とにかくここから移動しよう。この少女を休ませられる場所へ」
「それなら私が。ここに来るまでの間にそれっぽい場所を見つけましたから」
「では道案内を頼めるか?その…」
「巴マミです。マミで大丈夫です」
「マミ…か。私はトキだ」
「…間桐、…桜です」

そう名前を名乗った後、三人はまず身を潜ませ落ち着くことができる場所を求めて歩き始めた。
巴マミが先導し、間桐桜をトキが抱えて。




それを口に入れた瞬間のことを何と表現すればいいのだろうか。
お菓子の魔女は、一口に間桐桜を飲み込んだ。
そして、お菓子の魔女は、己の体が壮絶な勢いで黒く塗りつぶされていくのを感じ取った。
が、気がついたときには遅い。
お菓子の魔女を中心として地面に広がった黒い影は、一瞬でその巨体を溶かしつくし。
それだけでは止まらず周りにいた使い魔も巻き込み、結界ごと全てを消滅させた。
まるで津波が浜辺に作られた砂の城を飲み込むがごとく、跡形もなく。グリーフシードすらも残すことなく。


もし、トキに魔力、魔術に関する知識があれば。
もし、巴マミに医学の知識、もう少しの聡明さがあれば。
間桐桜に僅かにでも警戒心を持っただろうか。
しかし、知識と性質のかみ合わなさは彼等にその思いを持たせることをしなかった。
だから知らない。
その場には確かに魔女結界が存在したことを。
それを、体に取り込んだことで消滅させたことを。

その事実を知らない彼らは、すぐ近くにある危機に気付かず進み続ける。
間桐桜。間桐の家を継ぐ魔術師にしてある機能を体に埋め込まれた少女。
本来であれば魔力を求めて歩き出すであろう狂気も、魔女を取り込んだことで今だけは安定している。故に今この場でその影を見せることはない。

潜むものの名はこの世すべての悪(アンリマユ)。
それが再び動き始めるときは、そう遠くはないだろう。


【1日目・深夜/H-6 江東区 国際展示場】

【トキ@北斗の拳】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:殺し合いには乗らない
1:殺し合いに乗っていない参加者達を助ける
2:休息できる場所を探しつつ二人と情報交換がしたい。
【備考】
※死亡後からの参戦です。


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康
【装備】マスケット銃
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:この殺し合いを止める
1:殺し合いに乗っていない参加者達を助ける
2:間桐桜を休息できる場所まで案内する。
【備考】
※3話、お菓子の魔女の結界侵入以前の参戦です。

【間桐桜@Fate/stay night】
【状態】疲労(大)、魔力消耗(大)、混乱、令呪残り1画
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:???
1:何が起こっているのか分からない。
2:おなかはいっぱい?
【備考】
※Heavens Feelルート、ギルガメッシュを取り込む以前より参戦です。

※お菓子の魔女のグリーフシードは間桐桜の影に取り込まれたことにより消滅しました。

 

 

001:0時だョ!全員集合でいい湯だな! 投下順 003:チャリで来た!
  時系列順  
START トキ  
START 巴マミ  
START 間桐桜  
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